photo NAOKI MIZOBATA
【3日目】海へ漕ぎ出せ!オリーブハマチ取材
3日目はまず、東かがわ市の「オリーブハマチ」を取材。11月中旬にもなると、オリーブハマチもそろそろ終盤の時期です。冬に向かって水温が下がっていくからです。
漁港では、服部水産の服部社長が、待ってくれていました。
服部社長から安全のための注意を聞いて、早速、船に乗り込みます。当日の海は穏やかで幸運でした。港から20分ほど沖の養殖場に向かいます。船は滑るように海面を進み、子どもたちは興奮気味に海を写真に収めています。
服部水産の養殖場は周囲25メートル角で、全国的にも大きな規模を誇る生け簀。この養殖場に約12,000匹ものオリーブハマチが回遊しています。
子どもたちも、服部社長に質問を投げかけていきます。
「なんで、オリーブハマチの養殖をするんですか?」
「例えばの話だけど、鯛を釣ろうと思っても絶対に鯛が取れる訳じゃないよね?いつも安定してスーパーやお店で、オリーブハマチが買えるよう、養殖をしています」
子どもたちの目の前で、固形のえさが空気砲でポンポン飛ばされていきます。
服部社長が隣につけたエサやり用の漁船からエサをとってきて見せてくれました。
オリーブの葉が混ざったエサです。子どもたちは写真を撮るのに我こそはと群がり、自分だけの発見をしようと熱気を帯びてきました。
「困ったことや苦労したことはありますか?」
「赤潮が出たり、病気になったりしたときです。今日これから鹿児島に服部水産の稚魚がいるので、ワクチンを打ちにいきます。魚にもワクチンを打つんですよ」
「えー!鹿児島!?ワクチン!!」
「一番嬉しい時はどんな時ですか?」
「大きく育って出荷されて、美味しいと言ってもらった時かな。少しドナドナな気持ちですけどね」
子どもたちは、船の上で懸命にiPadにメモしていきます。
「オリーブハマチのおすすめの食べ方をおしえてください。」
「1位は刺身、2位しゃぶしゃぶ、3位てりやきかな。香川県に住んでいる子どもたちは、新鮮なうちに食べられるから、ぜひ刺身を食べてほしい。お昼ご飯に、みんなが食べられるよう提供しているから、ぜひ食べてみてください!」
「さすが、社長や!」「ふとっぱら!」
食べることになると、少しモードが変わる子どもたち。笑い声と共に、みんなのお腹もすいてきたようです。
お昼ご飯は、三本松駅前にある和食店、魚源さんにお世話になりました。刺身はもちろん、服部さんのオリーブハマチ!
店主の上原さんが、料理人の立場から話してくれます。
「服部さんのオリーブハマチは、非常に油の質がいいです。昔より養殖の技術が発達していることもあり、生臭さがまったくない。冬場はこれからどんどんおいしくなりますよ。生きている魚を食べるということは、命の力をもらうことだと、おっちゃんは思います。魚の命をもらって、みんなも健康になってな!」
言い終わるや否や、子どもたちから「おかわり!」という大きな声が上がりました。
オリーブハマチに関わる地元料理人さんの熱い言葉と子どもたちの食欲で、充実の食事時間となりました。
子どもたちのおかわりリクエストに全部応えてくださった店主の上原さん、ありがとうございました!
坂出市の「柿の葉のお茶」って何だろう?
午後は一気に西へ向かい、坂出市にある柿茶本舗を訪れました。ここで取材するのは「柿の葉茶」です。
普段はあまり身近なものではない柿の葉茶ですが、誕生のきっかけは、戦後の栄養不足の時代にあります。ビタミンCが豊富な柿の葉のお茶の存在を知った初代が、75年前に製造を始めました。無農薬の葉を、暑い夏に1枚1枚手摘みしています。1か月近くで、1日当たりおよそ600kgを収穫。柿の葉の収穫は全部で12トンにもなるそうです。
井上社長は3代目。子どもたちに柿の葉茶の魅力が伝わるようにと、2種類の柿の葉茶を用意。まずは飲み比べからからスタートしました。
みんな、品川先生仕込みの「鼻をつまんで飲み、手を放す方法」を確かめながら試飲します。口々に、味の違い、香り、色の違いを口にし、味わい方も板についてきました。
次に井上社長が用意していたのが、渋柿と甘柿の実です。
大人でも躊躇する渋柿の試食。
子どもたちは「ぜんぜんちがう!渋柿、無理!おいしくない!」と口々に反応します。
井上さんが甘柿と渋柿の両方を試食してもらったのには意味があります。柿茶本舗の柿茶は、渋柿も甘柿も両方の葉が使われているからです。
「渋柿の葉と甘柿の葉で味は違うんですか?」
「葉は乾かしたら甘くなります。最終的には両方混ぜてお茶にしています」
昔の人の今に伝わる知恵として、井上社長は柿の葉寿司も用意していました。食べ物が腐らないために柿の葉が役に立っています。子どもたちは柿の葉寿司を食べながらも、井上社長に質問を投げかけます。
「お茶のつくり方を教えてください」
「つくり方はシンプルです。収穫し、蒸して、乾燥させ、その後大きなタンクで保存します。最初600キロだった柿の葉が、この過程を経ると30キロにまで減ります」
柿茶本舗での試食はまだまだ続きます。柿の葉茶の成分を濃縮した、アスミンという粉末が登場。黒い粉末のアスミンだけを食べると、子どもたちは顔をしかめていましたが、井上社長が工夫して作ったアスミン入りアイスクリームが登場すると、一気にテンションが変わります。
「冷たい!」「おいしい!」
アスミン入りアイスクリームの味わいに歓声を挙げていた子どもたちでしたが、品川先生からの「甘みと苦味はマッチングする味なんですね。」の一言で我に帰り、メモを取り始めました。
最後の取材先ともなると、質問はどんどん具体的になり、「人のきいてないことをきいてやろう」という意欲が高まっていました。中には「楽しかった」だけでなく、「いいものにしたいから、今のうちにしっかり聞いておきたい」という子もいました。
気付いたことがたくさんある中から、何を抜粋するのか、ここは個性の発揮しどころ。最終日の発表が、楽しみです。
2日間の取材を終えて、子どもたちは本番に備えます
瀬戸内海放送に戻ってきて、振り返りを行います。
まず、どの食べ物を取り上げるのか、話し合いが行われました。この日は絵コンテ用紙が配られ、「言葉のまとめ」も始まりました。自分だけの「だれもしらせてくれないけん」ニュースをどう切り取るのか、これまでの取材の成果がついに形になり始めます!
大量の写真やメモを振り返りながら、ああだこうだと悩んでいます。
「来週は、ついに発表です!みんな、頑張って考えてきてな!」
河田先生の明るい声にちょっとプレッシャーを感じながら、2日間の取材が終りました。
1週間後は発表会本番!まとめる、伝える、って難しい!頭を使うことになりそうです。
香川県の小学生が地元の食材の産地などを取材し、オリジナルのニュースづくりに取り組みました。
児童たちは、ただ生産者の話を聞くだけではなく、匂いをかいだり、味わったりと「五感」を使っておいしさの秘密に迫ります。「自分だけ」の気付き、そして、伝え方を目指した小学生記者たちの奮闘を追いました。