1998年入社
報道クリエイティブユニット
喜多 信博
Kita Nobuhiro
報道クリエイティブユニット
報道と番組制作を中心に編成広報や経営管理でもキャリアを積む。2022年3月にグルメ情報番組「ヒルペコ」のプロデューサーに。
「知りたいことを
決めるのは生活者」
「美味しいものが好きなので、趣味と仕事を兼ねているようなものですね」
報道クリエイティブユニットの喜多は、ランチが主役のグルメ情報番組「ヒルペコ」のプロデューサーだ。
食べることだけでなく、店の経営者や店で出会う人、そして、そんな店がある街が好きだという。
番組の生命線は、どの店を紹介するか。
これまでは事前にリサーチした上でディレクターと相談して決めていたが、2022年12月から視聴者の投票でランキングが決まる「ヒルペコ総選挙」をスタートさせた。
「好きなパンの店」など、各回テーマを設定すると、1000人から1500人ほどが投票してくれる。
「視聴者が支持しているお店なので、押しつけ感がなく説得力も高い」と喜多は考える。
ランキングからは、「視聴者の今の声が反映されており、意外な店が入っていたり毎回学びがあります」という。視聴者の声で番組を作るマーケットインの考え方を取り入れたからだ。
新店情報を紹介するコーナー「さすらいの新店探偵」でも、どのエリアの情報が欲しいかなど「知りたいことを決めるのは生活者」というスタンスを貫く。
番組で発信する内容はテレビ局が一方的に決めるのではなく、視聴者のニーズを意識する。
生活者が知りたいことは何かを抜きにして番組は作れない。
「地上波は
何を発信しなければ
ならないか」
グルメ情報といえば、インスタグラムにもあふれている時代だ。
しかし、喜多は「インスタはライバルというよりは一緒に地域のグルメを盛り上げていく存在と捉えています」と話す。
ヒルペコでは、多数のフォロワーを誇る地元のインスタグラマーにも出演してもらい、相乗効果を図っている。
2023年8月からは喜多の提案で、夜の飲食店情報を発信する「ヨルペコ」という異色のコーナーが始まった。
「『ヒルペコ』という番組なのに夜の情報だなんて、矛盾しているのではないか」という思いを抑えて思い切ってスタートさせたという。
コロナ禍で外食は自粛ムードが続く中、喜多は「多くの人が夜の情報に飢えている」とにらんだ。
予想通り、番組には「こういうの欲しかったんです」「ヨルペコ、いいですね」という反響が届いた。
「グルメ情報へのニーズは50年後もあるでしょう。では、地上波はいま何を発信しなければならないのか。そんなことを真面目に考えて始めたコーナーです」
時代を捉えた喜多のMakersとしての矜持が伝わってきた。
世の中や世界を
変えられることがある
喜多は入社26年目を数えるベテラン。報道記者のキャリアも長く、番組の受賞歴も豊富だ。
「僕くらいの年齢になると、自分の経験を若い人に伝えていくことが大きなミッションです」
若手社員と接する際に、自身の取材経験ではどんな成功があったのか具体的に語ってみせる。
そして「KSBという会社には、やりたいことがあれば、若い頃からやらせてもらえる環境があります」と力を込めた。
20代で沖縄サミットのテレビ朝日取材班に入り、クリントン米国大統領の取材にも携わった。
2006年の特ダネは国を動かした。台湾で「讃岐」という言葉が商標登録されてしまい、台湾で讃岐うどんを名乗れなくなった問題をスクープ。
ローカルニュースで丁寧に報道していたところ、特許庁が動いて結果的に商標登録の取消につながった。
2009年には「食卓から魚が消える!?海をなんとかしなきゃスペシャル」で全国ネットの特番のプロデューサーも経験。
食材でもある魚を通じて、瀬戸内海の異変を取り上げ、故郷の海を守ろうとする人たちに焦点をあてた。
「善いことの『ちから』に」の
思いをもって仕事に取り組む
思い返すと、報道で手掛けた多くの仕事は、地域の食や食を支える人の「善いことの『ちから』に」なるものだった。
「この仕事をやっていると、人生をかけて取り組む問題に出会えます」と笑みを浮かべた。
時代とともに変化を迫られるテレビ局だが、変わらないものもある。
「ローカル局の報道でも国を動かせます。世の中にとって良い方向に動いていくきっかけを作れます。KSBを目指す若い人には、そんな仕事もできる環境がここにあることを知っていてほしい」
喜多はまっすぐな眼差しで語った。