REPORT

香川の素晴らしい食材で、ぜひ自炊をして欲しい!|香川はうまいか!?夜の部トークショー(2019.09.01開催)

米澤文雄シェフ、眞鍋倫明さん、鹿庭大智さん、浪越弘行さん、国見(写真左から)

9/1(日)開催の食事「香川はうまいか!?-米澤シェフが感動した生産者-」では、食事後にトークショーを行いました。夜の部のトークショーの模様をご紹介します。

昼の部トークショーのレポートはこちら

香川が“幸せ”になるために必要なこと

SANUKI TABLE・国見香須子(以下、国見):
 SANUKI TABLEとは、香川県の“食”の世界をどうすれば幸せなものにできるか、考えて実践していこうというプロジェクトです。香川県には、素晴らしい生産者がいて、食に関わっている志の高い人がいらっしゃいます。そんな私たちで共有できる、テーマを探せないかと考えております。

米澤文雄シェフ(以下、米澤シェフ):
 唯一、香川県民ではない香川県代表です(笑)
 地方が活性化し、農業が豊かになるための一番のポイントは、自炊率が上がることだと思います。昨日は、パパと子どもを対象とした料理教室を開催しました(レポートはこちら)。料理教室で大切なのは、再現性の高いレシピであること。当たり前ですが、自分が作った料理を褒められると嬉しいですし、嬉しくなったらまた作る。だから、「これだったら自分でも作れる!」というレシピである必要があります。家庭での自炊率が上がるように、料理人の立場から“簡単で、美味しいレシピ”を提案できればなと思っています。
そしてもちろん、料理人として、地方のお野菜を、農家さんが考えないアプローチで料理をすることで「あの地方のこの野菜が美味しい!」ということを改めて伝えていければと思っています。

塩の生産・浪越弘行さん(以下、浪越さん):
 Cafe De Flotsでは、農家さんの話を聞きながら一緒に食事をするイベント“団欒キッチン”を開催しています。食べる人にも、誰が作った食材なのか理解して欲しいですし、農家さんにも、こんな料理になって、こんな顔をして食べてくれるんだなっていうのを肌で感じてもらい、少しでも日々の励みになればいいなと思って活動しています。
 香川は小さい県なので、すぐに会いに行ける距離でもあります。“隣の人のことを考える”ことができれば、課題が解決できるんじゃないかと考えています。

国見:
作る人、食べる人、運ぶ人。人と人との絆、信頼関係を築くことが、地方の力に繋がるのかなと感じます。

生産者との理想的な関係

畑に行く八百屋Sanukis・鹿庭大智さん(以下、鹿庭さん):
眞鍋さんと米澤さんみたいな関係が理想です!
僕には何ができるだろうと考えたときに、僕が仕事をしている商店街近辺の料理人さんや店に来てくれる人に、僕が知っている農家さんのことを伝えていくことだと思いました。
 食べものは、人の人生を作るものだから、商品としてではなく、ちゃんと食べものとして売りたいと考えています。

アスパラ農家・眞鍋倫明さん(以下、眞鍋さん):
 アスパラを通じて人の心を癒したいと思っていたところ、東京のシェフに見つけてもらい、東京・大阪に販路ができました。東京のレストランで“香川のアスパラ”として使ってもらえると、食べた人がその後、スーパーで香川県産のものに目がいくようになるのではないか。そうなれば、私が東京で販売していることも意味があるのかなと思います。

米澤シェフ:
 眞鍋さんとの出会いは、東京の野菜ソムリエからの紹介。眞鍋さんが作ったアスパラが美味しくて、すぐに連絡を取りました。眞鍋さんのおかげで香川に来るようになり、本当にいろんな人と繋がりを持つことができました。

鹿庭さん:
 こんなにも思いのある農家の方がいて、美味しいアスパラがあるのに、香川県で売ろうとする人がいなかった。もっと香川の人に知ってもらいたいです!

農家の後継者問題について

眞鍋さん:
 アスパラに関しては情熱があります。アスパラに農業人生を救われているからです。
新しいハウスを建てて実験に協力したり、新しい肥料を作ったり。県内でのアスパラ生産普及のため様々な工夫をしています。来年は、サラダ用のグリーンアスパラが出荷できる予定です。楽しみにしていてください!

国見:
 眞鍋さんのような、職人気質な農家さんの野菜を食べられることがとても嬉しいです。ですが、そこまでこだわる眞鍋さんのアスパラは、誰か継いでくれるのでしょうか。

眞鍋さん:
 僕の農場に来ている研修生も、最初は僕の昔ながらの作り方に興味を持ってくれます。
 アスパラの味にも感動はしてくれていますが、手作業で泥まみれになりながら作業をするため効率が悪く、結果今風の作り方に落ち着いてしまいます。肥料もこだわって作っているのすが、僕のやり方をそのままやるように、とは勧められません。

鹿庭さん:
 今回、料理にも使用していたはざまのイチジクの農家さんは、体調が悪く今年も作れるかどうかという状態でした。三豊茄子も今年3軒の農家さんが生産をやめてしまいました。
何か“ものを買う”ということは、その人に一票を入れること。“安かろう悪かろう”のものに一票を入れてしまうと、そういうものしか残っていかないものです。皆さんにも、自分が心から残って欲しいものに、一票を入れて欲しいです。

国見:
 SANUKI TABLEの活動を通して、色んな方にお話を聞いていると、やはり人と人とのつながりが一番大切だなと身に染みて感じます。一気に仲間を増やすよりも、本気で一緒に考えてくれる仲間を、一人でも二人でも、少しずつ輪が広がっていければいいなと思っています。

鹿庭さん:
 人を助けるのは人であり、地域を助けるのも地域の人。
地域の人が、自分が住む地域を好きになり、自分の地域を紹介して欲しい。そうすれば、香川も豊かになるのではないでしょうか。

香川にこうなってほしい!という願い

国見:
 最後に、「香川にこうなってほしい!」という願いや希望をお願いします。

浪越さん:
 その日の食卓を食べる時、これを食べたときに誰がどうなるんだろうかということを、余裕があるときに考えてもらえたらいいなと思います。

鹿庭さん:
 ものを買うとき、仕事をするときに、自分の利益だけではなく、それをすることによって、周りの人たちや地域にどんな影響があるか、喜びを与えられるか、ということを考えて欲しい。自身の行動が変わると、何かを選ぶことの楽しみが増えてくると思います。

眞鍋さん:
 現在、農家を取り巻く環境は良いとは言えません。農薬を使うと役場に連絡が入ったり、野焼きをすると灰が飛んできたと注意を受けたりもします。農作物を育てる上で必要不可欠な作業でもあるので、ある程度、地域の方々にもご理解いただきたいと思っています。そして若い農家を増やすためにも、作りやすい環境を整えていきたいと思います。
 知人に「いくら美味しいアスパラを作っても、料理をしない人が多いから食べてもらえないよ」と言われたことがあります。香川県の素晴らしい農作物の数々を、是非自炊して味わって欲しいです!

米澤さん:
 僕も、自炊率があがればいいなと思っています。若いモデルの子が自炊料理を上げたりしているが、料理をするのがファッション、かっこいい!という切り口も良いのではないかと思っています。

 「自炊率が増えると、外食が減って自分のお店に人が来なくなり逆効果じゃないか?」と言われたことがありますが、それは逆。料理が作れるようになる、美味しいものが好きになると、もっと美味しいものを食べたいと思ってレストランに行くようになると思います。香川県だけではなく、東京も、他の地方もそうなればいいなと思っています。
 僕たちが、今しなければいけないことは「なるべく今の味を守ること」「自炊をすること」そして「日本のもの、地元のものを食べること」。これが、今できる、最大で最高に効果のあることなのではないでしょうか。

国見:
 私たちが生まれたところの豊かさを再確認し、自分たちの地域に、香川の食の世界に、誇りを持っていただきたいと思います。SANUKI TABLEは、香川の食の世界が幸せになるために、今後も一歩一歩ひとつずつ、進めていきたいと思っています。皆様、これからもご愛顧いただければ嬉しいです。

 参加者の皆さんが、大きく頷きながらお聞きいただいている様子が印象的でした。野菜を選ぶとき、トークショーで語られた内容を思い出して頂ければ嬉しいです。そして、香川県の素晴らしい食材で自炊をして、味わって頂ければと思います。

最後に集合写真を。皆様、ご参加ありがとうございました!

(レポート:SANUKI TABLE 岡田 彩)

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