9月1日、高松市西宝町の瀬戸内海放送 社員食堂・百菜家(ひゃくさいや)にて、 「香川はうまいか!?-米澤シェフが感動した生産者」を開催しました。
ご挨拶
食事会スタートに先立ち、SANUKI TABLE 国見より、ご挨拶。
「SANUKI TABLEは、KSBが開局50周年を機にスタートした、香川の“食”がどうすれば幸せな形になるかをテーマとしたプロジェクトです。
今回は、私たちが美味しいと思って食べている食材は、どんな価値を持っているのか、県外の香川県の食材を愛する料理人さんに聞いてみたい、そして、その料理を私たちが食べてみたいと思い企画しました。」
香川は食材がいっぱい
まず、米澤シェフから本日の食事会のコンセプト説明がありました。
「香川県の食材は、畑の野菜の他に、海、山などバランスよくいろんなものがある印象を持っています。野菜(眞鍋さんのアスパラガスです!)をきっかけに香川に来るようになったので、野菜をメインに使ったビーガン料理※にしてみました。」
※ビーガン料理…ベジタリアンとは様々なタイプの菜食主義者の総称ですが、ビーガンは卵や乳製品を含む、動物性食品をいっさい口にしない「完全菜食主義者」のこと。
デザートで使用されている「ビーガンチーズ」は、カシューナッツから作られています。
今回の食事会のメニューは全8品。香川県産の食材が23種類使われています。
料理に合わせて、米澤シェフが料理の説明、そしてゲストスピーカー3名から食材についての想いをお聞きしながら食事会が進みました。
こだわりの県産食材の生産者さんを知ってほしい
鹿庭さんは、直接農家さんと信頼関係を築いて野菜を仕入れている八百屋さんです。時には草抜き、収穫も行いながら、屋号の“畑に行く八百屋”を体現しています。鹿庭さんからは、当日使用した食材の生産者の方について伝えていただきました。
1品目のウェルカムドリンクで使用されている瀬戸ジャイアンツは、国分寺町の明石農園さんのもの。標高200m程度に位置し、昼夜の温度差がある農園。
ブドウ本来の味、爽やかな風味と味わいを出すことにこだわって作っているそうです。
2品目のサラダ仕立てに使われているのは、はざまのイチジク。 本来はもっと味が濃いそうですが、ここ最近の雨で、皮が開いてしまい本来より味が薄くなっているようです。
しかし、十分しっかりした味わいで、こんなイチジクに出会ったことがない!と米澤シェフは驚いていました。いかに県産食材のレベルが高いかが分かるエピソードでした。
4品目のケンタッキーいんげんは、鹿庭さん推薦の食材。
鹿庭さんは、最初に食べたとき、美味しい!とびっくりしたそう。あまり流通していない理由は、その大きさ。今回の料理では半分にカットして使っていますが、この倍程度の大きさがあり、かつ曲がることもあるため流通には乗せにくいそうです。
大きくなると固くなるものも多いですが、このケンタッキーいんげんは大きくなっても柔らかく、豆の味が更にしっかりするのだとか。
香川県の特産品ではないけれど、是非食べてもらいたいと推薦してくれました。
5品目の三豊なすは、鹿庭さんも誇る香川県の伝統野菜。
皮が薄く、かつ大きいため箱に詰めににくく、また日持ちがしないため、ほとんど西讃の産直やスーパーに出荷されるだけになっている野菜です。高松の店頭で販売したい、料理人さんにも使ってほしいという思いで、2日に1回は生産者さんのところに集荷に行っているとのこと。
三豊なすはこれからが旬の季節。夜の温度が下がってくると味が濃くなり美味しくなります。是非もっともっと食べて欲しい!と鹿庭さんは言います。
また、米澤さんも香川で食材巡りをした際、三豊なすは絶対に使いたい!と思った食材の一つなのだとか。青山1丁目のお店でも、メニューで使っているそうです。
アスパラを作って26年目、次の世代へ繋げるレジェンド
3品目の香川本鷹麺の冷製パスタには、眞鍋さんのアスパラを使用。
眞鍋さんは、アスパラガスを作って26年目。丸亀市で緑、紫、ホワイトの3色のアスパラガスを昔ながらの手法で、丁寧に手間をかけて作っています。
アスパラが一番美味しいのは3月~5月。今の時期アスパラは、3~5月に比べると、1本で丸々食べるほどの味が出ないので、ぜひ春のアスパラを食べて頂きたい!と力強くアピールをしていました。
ちなみに、眞鍋さんのアスパラには東京・大阪のレストランなどにファンがとても多いそうです。「眞鍋さんのアスパラであれば、いつでも、どんなサイズでもいい!」とベタ惚れのシェフが多いのだとか。
東阪での流通の第一人者の眞鍋さんは、県外に出荷する理由として、「レストランで香川県産のアスパラガスを食べることで、その後各々がスーパーに行ったとき、“香川産”の野菜や食品などに、気を留めてくれるようになったら嬉しい、という思いです」と語ります。全国のスーパーで、「香川県産」食材が積極的に選ばれる日が来るといいですね。
鹿庭さんは、眞鍋さんのアスパラについて次のように語ります。
「眞鍋さんのアスパラに分けてほしいと伺った際、最初は『ありません』と言われてしまいました。(※東阪に出荷していたため、本当になかったそうです)
その後も根気強く通っていると、ちゃんと分けていただけるようになりました(笑)
僕が眞鍋さんのアスパラを取り扱いたい理由は、ただ美味しいからだけではなくて、次の世代へつなげるために、若い研修生を入れたり、色んな飼料を試したりして、眞鍋さんが独自の手法を次の世代に伝えようとしてくれているから。なかなか県内で流通していないけれど、八百屋として、眞鍋さんの名前で販売して、香川県にこんなアスパラがあるんだっていうことを誇りに思ってほしいと思っています!」
料理人だからこそ作れる塩で、塩の奥深さを伝えたい
「仁尾町は、もともと塩業で栄えていた町ですが、僕が子どものころには産業としては廃れてしまっていました。地域の資源がなくなっているのが寂しく感じたため、塩業自体を仕事にはできなくても、料理人だったらその塩を活用できるのではないかと思い始めました。
仁尾の海水を煮詰めた塩の結晶を味見してみたところ、『この海の味がする!』と感動したのを覚えています。これは地域に特化した味になる、地域で育った野菜や魚に合う塩になる!と確信ました。
現在は、塩を60種類程度作り、オーダーメイドで料理に合った塩を製造しています。」
5品目、三豊なすのフリットを彩る“父母ヶ浜の塩”は、仁尾町cafe de flotsを営む浪越さんが作ったもの。
米澤シェフが、浪越さんの塩に出会ったのは去年の夏。 肉中心のお店をオープンするにあたり、ソースではなく、シンプルな食べ方をしたいと思っているときに、浪越さんの作る塩と出会ったそうです。
浪越さんが米澤シェフのために作っている塩は、特注の一番搾りの部分。500リットルの海水から、1kgできるかできないかの貴重な塩だそうです!
貴重な香川県産乾燥そら豆と、鹿庭さんが太鼓判を押す坂出金時
ファラフェルとは、潰したひよこ豆に香辛料を混ぜ合わせたコロッケのようなもの。
香川県産のドライそら豆をメインで使いたいという米澤シェフのアイディアを受け、香川県産こだわりしょうゆ豆を製造している山清さんにお願いして特別に別けて頂きました。
「私が子どもの頃は、農家の方が育てて、カリカリに乾燥したそら豆を各家庭が保存していました。それを焙烙(ほうろく)と呼ばれる素焼きの平たい鍋のようなもので煎り、しょうゆなどで味付けをして食べていた保存食が郷土食のしょうゆ豆です。
現在、山清では、香川県産のそら豆でしょうゆ豆を製造・販売しています。今回香川県産のそら豆が探しているとのことでしたので、手持ちのそら豆をお分けしました。米澤シェフの手にかかると、すごい料理になるなと驚いております。」
そして、ファラフェルステーキの下には、坂出金時にバニラビーンズと少しアーモンドミルクを加えて伸ばしたピューレを。一番上には坂出金時の皮を揚げたものとトッピング。
夜の部では、鹿庭さんが敬愛する坂出金時の生産者・宮下さんからご挨拶がありました。
「坂出は、瀬戸内側で日照時間が長く、農作物を育てるのに良い土地です。また、かつて塩田だった坂出の畑は、ミネラル分が豊富な土壌であるため、サツマイモの栽培に適しています。非常に濃厚な、パンチの効いた味をお楽しみください。」
鹿庭さんは、 宮下靖弘さんを次のようにご紹介くださいました。
「宮下さんは、“作ること”に毎年1年生だというくらい、向き合って育てている方。この坂出金時がなかったら八百屋をやめようかなと思わせる生産者さんです。
宮下さんの畑は一目で分かります。一面葉っぱで、どこが溝でどこが畝か分からないくらい。それだけ豊富に育った葉っぱから栄養が身にしっかり入っています。宮下さんが作る坂出金時は、収穫から1か月程度でデンプンがしっかり糖化しますが、年を越すと更に糖化が進んで甘くなる。3月くらいまで保存してもおいしいお芋です。」
香川県産食材が“豊か”であることに気付く
生産者の眞鍋さん、浪越さん、そして八百屋の鹿庭さんに食材について教えて頂くと、「料理を食べる」という行為が、より味わい深いものになります。
香川県の食材がこんなにも豊かであること、そして生産者の皆さんのこだわりや信念に思いを馳せて頂ければ幸いです。
次回は、昼の部のトークショーの内容をレポートします。
(レポート:SANUKI TABLE 岡田彩)