REPORT

使って、食べて、喜んで。野菜を伝えて欲しい。| まんばでDinner(2020.01.26開催)

2020年1月26日、SANUKI TABLE発足当初からお世話になっている小川翼さんが手掛けるアラドーラ(高松市古馬場町)にて、まんば料理を味わうイベントを行いました。

小川さんの他、味どころ撰(高松市木太町)の西岡さん、そしてSANUKI TABLEのイベントには欠かせない、香川の素晴らしい生産者と私たちをつなげてくれる畑に行く八百屋Sanukis(高松市今新町)の鹿庭さんにご協力いただきました。

その他、中国料理 北京(高松市片原町)の中井さん、good food studio CARDAMON(高松市古新町)の八木さんにもお料理をご提供いただきました。

趣向を凝らしたまんば料理

「まんば」の由来は、何枚も何枚もたくさん採れるから。西の方では、「ひゃっか」「せんか」とも呼ばれています。香川県の西の方では、赤っぽいまんば、東の方は青っぽいまんばが好まれる傾向にあるとのこと。

きっと皆さん、“まんばのけんちゃん”でおなじみかと思います。

今回は、地元香川の料理人が、和洋中いろんなまんば料理に挑戦しました!

  • 香川やさい八寸
  • まんばの赤だし
  • 熟成鰆 + まんばのチャットマサラ
  • まんばペーストカレー
  • まんばの”撰ちゃん”
  • まんば春巻
  • まんば炒め シチリア風
  • まんばジェノヴェーゼと熟成害獣ボロネーゼのピッツァ
  • まんばと熟成オリーブ豚のサルシッチャ
  • まんばのお茶漬け
  • まんばの漬物
  • まんばとエルダーフラワーのソルベ ドルチェ

香川が誇る熟成促進装置 [Aging Booster]

小川さんが愛用している四国計測工業の熟成促進装置・Aging Booster(エイジングブースター)

もともとジビエを熟成させる以外、「熟成」は贅沢な技術だと利用していなかったという小川さん。1年ほど前に知人を介して、面白い機械を作っている人がいる、と紹介されたのが始まりだったのだとか。

ある時、生ハムを熟成促進装置に入れてみると、口当たりがすごく良くなったそうです。微量な振動を入れながら芯温をあげるので、塩の入り方がとても良くなるとのこと。それをきっかけに、本格的に使うようになり、今ではこの熟成促進装置を駆使して、様々な食材を試しているそうです!
(モッツァレラチーズを入れてみると、口当たりと旨味が全く変わるそうです!)。

今回のメニューでは、シカ・イノシシ肉を熟成させてピッツァに、
サルシッチャ(ソーセージ)も、熟成すると少しの塩で味付けができるのだとか。
そして、小川さんイチオシでメニューに加わった熟成鰆。味どころ撰の西岡さんが塩を打ち、小川さんがエイジングブースターの調整をしたお料理です。まんばのチャットマサラは、good food studio CARDAMONの八木さんがご提供くださいました。

熟成鰆 + まんばのチャットマサラ

四国計測工業さんは、香川県仲多度郡多度津町に構える企業です。

この熟成促進装置が、料理専門雑誌に掲載された時も、たくさんのシェフから小川さんに問い合わせがあったのだとか。「この素晴らしい機械を作っているのが香川の企業であるということに誇りを持って、今後も注目してほしいです!四国計測工業さんと一緒に、地方をもっと盛り上げていけたらと思います!」と力強く語る小川シェフの言葉に、参加者一同惹き込まれている様子でした。

熟成促進装置 [Aging Booster]のページはこちら

新しい家庭料理を!「まんばのシチリア風炒め」

まんば炒め シチリア風

今回は、家庭でまんばを簡単に美味しく食べられる料理を、小川シェフにレシピ化していただきました。

まんばの“苦み”が好きという小川シェフ。
その苦みの原因であるショウ酸は、水で流れるという特徴があるので、お湯ではなく、あえて水で1日あく抜き。
イタリアのシチリアでは、苦みを生かすために、ブラッドオレンジや干しブドウなどの甘味で苦みを緩和して調理をすることが多いのだそうです。

《料理のポイント》
●干しブドウは、白ワインで一晩漬けてふやかす。サフランを入れると香りが立ちます。(サフランはなくてもOKです!)
●ブラッドオレンジは、カットして最後に火を通すように。もしくは下に敷いてその上においても良いそうです。(オレンジやミカンでもOK!)

“まんばのけんちゃん”だけじゃない、まんばの苦みを生かした新しいレシピをぜひ、ご家庭で試してみてください!

使って、食べて、喜んで。野菜を伝えて欲しい。

「干したり、漬物にしたり、生で使ってみたり。料理人が試行錯誤して熱くなれる、まんばづくしのコース料理ができるのは、まんばが香川県民にとって、生活に根付いた野菜だから。」

昔から、冬に葉物野菜が少なかったため、家庭で大事に育てていたまんば。市場に出荷され、流通する野菜というよりは、自分の畑に行ったらあるようなものだと鹿庭さんはおっしゃいます。
香川県が伝統的な料理の仕方、独自の味を次の世代に引き継げるか、伝統を残せるかどうか…まんばは、そう私たちに問うているような気がします。郷土料理“まんばのけんちゃん”が無くなるのであれば、香川県の“伝統の味”はどんどんなく消えていく。各家庭の味をぜひ引き継いでほしい。」

まんばはアクが強く調理するのに手間がかかる!…と思っている方もたくさんいらっしゃると思いますが、最近のまんばはサッと湯通ししたらアクも抜けるので、昔より随分使いやすくなってはいるようです!

「(アク抜きなどの)手間をかけることで、昔からの香川の味に思いをはせて料理をしてほしい。そして、親子のコミュニケーションを取り、家族で団欒しながら、香川県の伝統の味や家庭の味を引き継いでいってほしいと思います。
今日のまんばのシチリア風のように、料理人が紹介する新しいレシピや使い方、技術を、家庭や知り合いに広げて欲しい。まんばをきっかけに、いろんな野菜を使って食べて、喜んで、子どもたちの世代に野菜を残して欲しいと思っています。」

生産者の他、流通業者、青果店やスーパー、食に関わる人がいてこその、私たちの食卓です。
食べるものにどれだけ時間をかけるか。野菜を選んで、メニューを考えて、少し手間をかけて下ごしらえをして。どういう風にその野菜などの食材を尊重するか、皆さんそれぞれのやり方で、食と向き合うきっかけとなれば幸いです。

小川さんからのメッセージ

小川シェフは北海道出身、高校時代は青森でサッカーを、東京ではスポーツトレーナーをしていたという異色の経歴の料理人です。

広大な北海道に比べ、香川県は土地が狭い分、畑を見たり生産者さんと付き合えたりするのが面白いとおっしゃいます。「この料理を作りたいから、この野菜」ということではなく、「この野菜が使いたい!という想いから料理を考える」という環境が魅力的だそうです。

「残していかなければいけないのは、今回テーマとした“まんば”だけではありません。一人ひとり、自分が好きな野菜を残したい!という気持ちを持って行動を起こすことが必要」と力強いメッセージを頂きました。

自分が好きな野菜を、地元で美味しく食べる。
当たり前のように感じていますが、農業の後継者不足から昨年も3軒の三豊茄子農家が生産をやめてしまった現状を考えると、地元で美味しい野菜が食べられなくなる未来がもうすぐそこまで来ているのだろうと感じます。
好きな野菜を好きだと表明するために、野菜を買って、家庭で料理をしてみてくださいね。(もちろん、鹿庭さんの受け売りですっ!)

西岡さんからメッセージ

SANUKI TABLEは、和食の西岡さんの他、イタリアンの小川さん、中華の中井さん、スパイス料理の八木さん、そして畑に行く八百屋Sanukisの鹿庭さんなど、多ジャンルな方々にお力添え頂いています。

西岡さんは、この多ジャンルで年齢も様々なチームに影響を与え、そしてまた刺激を受けてくださっているようです。「みんな意志がしっかりとしていて、自分の意見を持っている。時に衝突もするけれど、柔軟に意見を吸収することができるメンバー。そして何より、魅力的な人との輪を繋げてくれる」とおっしゃいます。

人と人が繋がることで、新しいものが生まれ、それが香川の食を元気にする。SANUKI TABLEから、そんな循環が生まれているのであれば嬉しいです。

参加者の皆さんの声

今回のまんばでDinnerには、高松青果の齊藤社長、高松大学の佃学長もご参加頂きました。

高松青果株式会社 代表取締役社長 齊藤良紀さん

「香川にはこれだけ素晴らしい野菜がある、料理する腕がある。どちらにも、熱いアツい想いを持った人がいらっしゃいます。Sanukisさんなりに、市場なりに、一生懸命生産者と料理人を繋げて、香川の食、地域の文化をもっともっと盛り上げていければと思います。県外・国外の人が訪れたい香川、というのも大事ですが、“我々がもっともっと誇りを持てる香川”になるのではと思います。

香川県のまんばは途絶えてしまったため、福岡の三池タカナの種を使用しています。「近所に、昔から変わらずまんばを育てている方がいらっしゃったら教えてください!」と、香川の青果市場を支える齊藤さんからのお言葉でした。

高松大学・高松短期大学 学長 佃昌通さん

「数年前まで、まんばと言えば、まんばのけんちゃんしかないと思っていたけれど、古い文献を調べてみると、まんばの葉を乾燥させるなど様々な工夫がありました。今日の、まんばとの出会いをきっかけに、皆さん一人ひとりがまんばについて語れるようになって欲しいと思います。
そして、まんばの他にも、チシャ、葉ゴボウなど無くなりそうな野菜があります。これからも美味しい香川の野菜が食べられたらうれしいなと私も思います。」

最後に

イベント終了後にも、料理の作り方を聞く参加者の方が何人もいらっしゃって、興奮冷めやらぬ様子でした。

SANUKI TABLEのイベントで毎回テーマになるのは、「香川県産の食材を使って、家庭で料理して欲しい」ということ。
食材の素晴らしさを改めて感じると共に、それを次の世代の方々へ繋げることが、今、最も必要なのだと考えさせられます。

次は、丸亀市手島にルーツを持つ、てのしま 林亮平氏による食事会とワークショップを開催します。
料理だけではなく、林氏の食材に対する想いと、料理をする上での覚悟など、様々な観点からもお話をお伺いできるのを楽しみにしています。
こちらでイベントレポートを更新致しますので、お楽しみに!

(レポート:SANUKI TABLE 岡田 彩)

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