2019年9月29日、丸亀市で香川本鷹のイベントを行いました。
スピーカーは、小学6年生の福田くん、手島で唯一の生産者 高田さん、青果店の鹿庭さん、加工品プロデュースの地域商社OIKAZE 相原さん、焼き菓子屋店グレンコ 臼井さん。それぞれの立場から、お話して頂きました。
小学6年生・福田くんの研究発表
丸亀市在住の福田くん。地元の特産品を調べていたところ、香川本鷹のことを初めて知ったそうです。香川本鷹の歴史、栽培について、高田さんへの取材内容について、集まった20名の参加者に向けて堂々と発表してくれました。
復活した“幻のトウガラシ”
400年前、塩飽水軍の本拠地である塩飽諸島に、豊臣秀吉によって伝えられたといわれている香川本鷹。讃岐の特産品として全国に知られていました。戦後、安い輸入唐辛子に押されて栽培が途絶え、「幻のトウガラシ」と言われるようになりました。 香川本鷹復活プロジェクトが立ち上がったのは2004年。試験栽培実施後、30年以上の時を経て復活しました。
高田さんは、13年前に香川本鷹の栽培をスタート。当時、塩飽諸島では20軒ほどの農家が栽培を始めましたが、徐々に減少し、高田さんは手島唯一の生産者となりました。
丸亀・手島の唯一の生産者 高田さん
香川本鷹の栽培に適した環境は、降水量が少なく乾燥した気候であり、水はけの良い土地であること。そして、香川本鷹の特色として、他の作物と交配しやすい性質があるため、周りに畑が少なく、本鷹の本来の特徴が維持できる環境であること。
島での生産は、他の作物との交配が少なく、香川本鷹の特徴が維持しやすいといえます。 また本来、島での農作物の生産は、輸送コストや鮮度の関係から出荷が困難ですが、香川本鷹の場合は乾燥品のため、鮮度関係なくいつでも出荷できるうえ、実が軽く輸送コストを抑えることができるという利点があるそうです。
辛くて旨味が凝縮された香川本鷹になるように、日々手間をかけて育てている高田さん。収穫の際は家族4人で力を合わせているそうですが、やはり後継者がいないと残念そうに話されていました。続けるのは、年ごとの判断になりますが、福田くんが取材に来てくれたことがとても励みになった、私もまだ頑張れるかな!とにこやかに話す高田さんの言葉を、福田くんも嬉しそうに聞いていました。
伝統野菜を“どうやって”残すかが課題
高松市今新町で青果店「畑に行く八百屋 Sanukis」を営む鹿庭大智さんは、ご自身の店舗で生とドライ両方の香川本鷹を取り扱っています。
「伝統野菜が“残る”だけではなく、“どうやって残すか”という点が大事。『知っている』と言う人は多いけれど、使っているか尋ねると使っていないことが多い。日々の生活に取り入れることが必要なので、店舗では必ず販売しています」
加工品ではなく、農作物として取り扱っているスーパーや店舗が少ない香川本鷹。
鹿庭さんは、「『香川本鷹が欲しい!』という消費者の声が大きくないと、取り扱いは増えない。実際に料理で使ってみて、ぜひリクエストして欲しいです!」と参加者の皆さんに呼び掛けていました。
ちなみに、香川本鷹は「成り物野菜」。本鷹の辛みでカッとするけれど、その後体を冷やし体温を下げる効果があります。夏に食べるのが最適!…ですが、冬に向けて、お鍋にドライの本鷹を切って入れれば、体がポカポカすること間違いなしです!(鹿庭さんは、みそ味やしょうゆ味の鍋に入れるのだそうです)
力を合わせて、ブランドとして育てていきたい
続いて、丸亀地域商社 OIKAZEの相原しのぶさんからご挨拶。
OIKAZEさんは、丸亀の地域産品を、県内外にアピールをし、地域の力を高めようと尽力されています。
相原さんは、ご自身の活動について「県外の人に知ってもらうことも重要だけれど、この地域に住んでいる人が、地元の魅力的なものを知って、好きになり、誇れるきっかけを作ることが役割だと思っています。そのような人が増えれば、県外から来る人に『私が住んでいる町には、こんな素敵ものがあるよ』と紹介できる土壌が育ち、それが地域の力になると思っています」と熱く語っていただきました。
相原さんは、高田さんとの出会いについて以下のように語ります。
「高田さんは、復活プロジェクト後、売り先がない状況に陥った時も、『この本鷹を守りたい』と毎年種を継いで育ててくださった。そのお話を聞いて、“高田さんが継いできた香川本鷹”を、私も継いでいきたいと思いました。」
高田さんの本鷹は、大阪・堺市の100年以上続く国内香辛料の老舗 やまつ辻田さんで「丸亀・手島の香川本鷹」の唐辛子として加工し、OIKAZEで販売しています。
最後に、「香川本鷹という香辛料が、生鮮やドライ、加工品など様々な形でたくさんの方に知っていただき、香川県の食の魅力を高めるとともに、香川県民の皆さんの心と体、両面から豊かにするような名脇役に育っていけるように、願っています。
近年、香川県全域で香川本鷹の生産者が増えてきました。丸亀の手島産として、他の地域の皆さんと切磋琢磨して、情報共有をしながら、“香川本鷹ブランド”を育てていきたいと思っています。」と力強く宣言してくださいました。
香川本鷹の“品質管理”の必要性
本日のお土産は、綾川町にアトリエを構える焼き菓子店グレンコ 臼井さんの、香川本鷹とラムの季節のケーキ。高田さんの本鷹を粉砕して生地に加えているそうです。一口食べるとラムの風味が広がり、後からピリっとしたほど良い辛みを感じることができる大人のケーキでした。
臼井さんは、“香川本鷹”の品質の明確な基準がないため、生産者が香川本鷹と言えば“香川本鷹”になってしまう、と苦言を呈していました。何が香川本鷹なのか、基準を整えて種と品質の管理をしっかりやる必要があると大切な意見をくれました。
香川本鷹を使ったジンジャエール、ナッツオイル
当日のイベントでは、鹿庭さんの自家製ジンジャーシロップを使った「本鷹ジンジャーエール」が振舞われました。
香川本鷹の他、自然栽培のショウガで作ったシロップ、シナモン、カルダモン、ブラックペッパーなどのスパイスと、豊島のレモンで作ってくださいました。飲んだあとに、ピリッと熱くなるのど越しが癖になりそうでした。
また、good food studio CARDAMONの八木香里さんがご提供くださった香川本鷹ナッツオイルを、三豊茄子にそえて頂きました。
香川本鷹は、他のとうがらしと比べると特別辛い訳ではありません。辛味と同時に旨味と甘味があるため、味に深みが出るのが特徴です。にんにく、オリーブオイル、しょうゆも香川県産。香川本鷹は、華やかな香りで他の食材の旨味を引き立てていました。
消費者である私たちの声が大切!
生産者、青果店、加工プロデュース、焼き菓子店、そして香川本鷹に興味を持った小学生。それぞれの視点から、伝統野菜である“香川本鷹”の未来と展望についてアツい想いをお話頂きました。参加者の方も、「唐辛子に関する見方が変わった」「香川本鷹で料理をしたい」「香川本鷹ジンジャーエールを作ってみたい!」など、香川本鷹の魅力に虜になったようです。
伝統野菜である香川本鷹を“どう残すか”。
香川本鷹は、丸亀市通町のOIKAZE、高松市今新町のsanukis、高松市仏生山町のおいしこくで販売しています。
消費者である私たちの声が大切になってきます。是非、買ってお料理に使ってみてください!
(レポート:SANUKI TABLE 岡田 彩)