「今年のムラサキは太いんですよ。」
丸亀市の藤井敏克さんは只今30歳。緑、白、紫、3色のアスパラガスを育てる香川の貴重なアスパラ農家です。
藤井さんは、2020年4月に株式会社めざめを立ち上げました。ご存知香川オリジナル品種“さぬきのめざめ”から生まれた社名です。
藤井さんが育てるのは、アスパラガスだけではありませんが、香川の農業について、後継者が続くよう、めざめさせたい、との意気込みが込められています。
30歳にしてアスパラガスだけで54棟計1ヘクタールのハウスを営む藤井さんは、目下、2人の社員と4人のアルバイトを雇用しています。
サラリーマン並みの月給、ボーナス、有給休暇を。その為に栽培面積を広げ、
利益を出していこうと、技術だけではなく経営感覚を磨いています。
農業を生涯の仕事に選んだのは、父の影響でした。
藤井さんが東京で証券マンだった頃、アスパラガス栽培を始めた父。帰省するたびに楽しそうな様子を見ており、そこに、やりがいが見えた時、自分なりのビジネスモデルがイメージできたと言います。
「大変でも、自分で作ったものを自分で売り、お客さんの声を聞く。必要なのは栽培技術と営業力。」
やがて丸亀市にUターンした藤井さんは、早速、インターンを経験します。インターン先は同じ丸亀市の眞鍋牧場。眞鍋牧場の眞鍋さんはアスパラガス栽培歴28年のベテランです。
「香川で一番と言われる人の所に行けてよかったです。眞鍋牧場には、ひっきりなしにお客さんがくるし、インターンの僕に、バイヤーさんも紹介してくれました。」
アスパラ名人の眞鍋さんに、香川県農業試験場の担当員さん。いつでも栽培の相談にのってくれる人がいる上に、ハウス栽培のアスパラガスは、天候に左右されない作りやすさがありました。
香川のアスパラガス“さぬきのめざめ”を核に、新卒から定年まで安心して働ける会社にしたい、藤井さんはそう言います。
第一次産業の後継者は地域にとって大切な存在。
作る楽しみ、売る喜び、そして地域に根差している実感。
香川が生んだ“さぬきのめざめ”は、食味がいいだけでなく、若手と農業をつなぐきっかけを生んでいるようです。