【レポート】1月27日開催 おかやま100人カイギvol.12

1月27日、おかやま100人カイギ vo.12が開催されました。今回でゲストは60組に到達。オンライン形式で多くのみなさんにご視聴いただきました。

Zoomを使ったゲストと参加者の交流は、今回から実施方式を変更。全員がひとつのルームを共有する形で、ざっくばらんにトークを深掘りしました。



それでは、5人のゲストによるトーク内容を中心に、当日の盛り上がりをお伝えします。

【イベントレポート】
vol.12のトップバッターは、大阪から高梁市吹屋地区に移り住み、辛味調味料の製造・販売を手がける佐藤 拓也(さとう たくや)さん。当初は定年退職後の地方移住を考えていたそうですが、ふと旅行に訪れたべんがらの街並みに惹かれ、「もう待てなかった」と地域おこし協力隊の一員として吹屋地区に赴任することになった、熱い思いの持ち主です。

協力隊では、イベントの運営をはじめ多種多様な活動を展開。地域から必要とされるうれしさを感じていたものの、任期の3年が近づくにつれ仕事がなくなることへの不安感にさいなまれるようになったといいます。そんなときに運命を変えてくれたのが、宴席で出会ったという吹屋産の柚子胡椒。一般的なものとは異なり、鮮やかな赤が印象的な逸品は、口に含むや否や「大汗をかきつつも、うまかった」と、当時を振り返ってくれました。

そこから柚子胡椒の特産品化に向けた動きを加速させた佐藤さん。製造から販売までを一手に担う「6次産業」を目指す過程で、「ただ瓶詰めにするだけではお客さんのもとに届かない」と思い当たり、だるまや天狗をモチーフにした愛らしいデザインのラベルを導入しました。すると、これが大当たり。おみやげや結婚式の引き出物といった用途で、全国的に人気を博すようになったのです。

現状に飽き足らない佐藤さんは目下、環境に負担をかけないものづくりに奔走中。なかでも柚子の果肉を備中牛の飼料に使い、その糞を堆肥にする取り組みは、持続可能な生産サイクルを形づくるうえで大きな意義が感じられます。佐藤さんのこれからに、さらなる期待が膨らみますね。

■佐藤さんの活動はこちら
佐藤紅商店 https://satotakunejp.stores.jp/


2組目のゲストは、保活のプラットホーム「ほいらく」を運営する大津 朱里(おおつ あかり)さん。全国的に見ても待機児童が多い岡山市に暮らすなか、2人の子どもが保育園に入園するまで数ヶ月を要した経験を通して、アナログな保活のあり方に疑問を抱いたことが、現在の活動の原点になっています。

たとえば、従来は電話のみに限られていた見学予約をオンライン化。それまでは手続きに5分ほどを要していたところ、30秒ですべてが完結できるようにしました。加えて、新型コロナウイルスの感染予防という副産物も生まれ、多くのママたちの評判を呼んでいます。

保育園を選ぶうえで欠かせない情報収集も、ほいらくに一元化。おむつの種類など、細かいながらもママ視点では気になるポイントを自ら取材し、ウェブ上で閲覧できるようにしました。それまでは専業主婦で、ウェブサイト構築に関する知識は持っていなかったという大津さん。育児負担があるにもかかわらず「もう自分でやっちゃおう」と、独学を始めたバイタリティには驚かされます。

育児中のママ、そして保育現場への貢献度の高さゆえに岡山市から情報提供を受け、いまでは市内の全保育園を網羅しているほいらく。この仕組みが全国に広がれば「子育てしやすく女性の輝く社会づくり」という自身のテーマも、おのずと達成されるはずです。

■大津さんの活動はこちら
ほいらく https://hoiraku.jp/


続いて壇上に上がった赤松 陽子(あかまつ ようこ)さんは、Food & Life Director、料理家という肩書きで活動中。「家の中身、つまりは暮らしそのものをつくりたい」という思いで、店舗デザインや施工、料理教室など、幅広いフィールドで活躍しています。

そんな赤松さんの原点にあるのが、ハウスメーカーに勤務していた20年ほど前の経験。現場監督として「ハコ」としての住宅を建てていましたが、アフターフォローにあたるうちに家の中身、特に食という領域に関心が向くようになったのです。そこで、独立にあたって着目したのが、フードコーディネーター。現在にまで至る活動の根幹は、このころ培われたものなのでした。

もうひとつ、赤松さんを語るうえで見逃せないのが、父の存在。食べることも飲むことも大好きな豪快な人柄で、とても仲がよかったといいますが、赤松さんが26歳のときにがんで倒れてしまいます。食事ものどを通らなくなった病床の父が、最後に残した言葉は「腹減ったなあ」。ここに「食べることは生きること」という、赤松さん自身のコンセプトが生まれたのです。痛切なエピソードを語る赤松さんの目に思わず涙が流れたのが、聞く人の胸を打ちました。

その後のトークでは、Food & Life Directorの一方で、ライフワークとしての「料理家」を名乗りたいと、今後の展望を語ってくれた赤松さん。誰の暮らしにも必要な食というテーマをどのように突き詰めていくのか、注目です。

■赤松さんのInstagramはこちら
https://www.instagram.com/air_yoko/


4組目、ギターの弾き語りからトークを展開してくれたのは、池田 雅子(いけだ まさこ)さんです。披露してくれた楽曲は、ボーカリストとしての活動時に名乗る「シルビア」のポルトガル語における愛称でもある「ジンジ」。この名前は、自身が営むブラジル料理店にも冠されています。

日本の21倍もの国土を誇るブラジルの魅力は多様性だと語る池田さん。自身の渡航経験をもとにコルコバードの丘、コパカバーナといった名所を案内してくれたほか、ブラジルグルメも紹介。豆料理のフェイジョアーダ、生ソーセージのリングイッサなどについて、聞いているこちらもおなかが空くようなトークを、すてきな笑顔とともに聞かせてくれました。

そんなグルメと音楽を岡山の人にも体験してもらいたいとオープンしたのが、「カフェ&ダイニング ジンジ Dindi」。常に新しいことにチャレンジしたいとの思いから、リオデジャネイロオリンピックの年にシュラスコの提供を始めるなど、岡山におけるブラジル文化の発信基地としての役割を果たしてきました。

ジンジのオープンから間もなく10年。新たにテイクアウトメニューをつくるといったように、まだまだ動きのあるところを見せる池田さん。多様性に満ちたブラジルの魅力が、より多くの人に伝わるといいですね。

■池田さんのお店はこちら
Cafe & Dining DINDI http://www.dindi-br.com/


さて、vol.12の大トリは、新庄村で自然保護活動や民泊などを行うボスケリコ農園の運営を通して、自分たちらしい家族の形を追求する、臼井 祟来人・幸(うすい たかきーと・みゆき)さん夫妻です。トークは、トランスジェンダーである夫・祟来人さんの「カミングアウト」から始まりました。

40歳まで自らのパーソナリティを周囲に打ち明けられずにいた祟来人さんですが、カミングアウトを経て「実は世間は温かい」という実感を得たとのこと。幸さんというパートナーにも恵まれ、それまでとは違う新しい暮らしをスタートさせました。

豊かな自然に囲まれた、新庄村。学生時代にエコツーリズムを学んだ祟来人さんは、観光客、お金、マンパワーが不足しているという現状を憂いながらも、その可能性を信じています。手つかずの自然がある一方で、人が手を入れてきたからこそ成り立つ自然もある。そんな確信が、2人を自然保護活動へと駆り立てているのです。

トーク全編を通して貫かれていたのは「オープン or クローゼット」というテーマ。新庄村の美しい自然をオープンにすれば傷つけられる恐れがある反面、クローゼットに留まらせておくにはもったいない。リスクを取っても、オープンにして、みんなに知ってもらいたい。かつてクローゼットに閉じこもっていた経験から語られる言葉には、確かな説得力がありました。

■臼井さんの活動はこちら
ボスケリコ農園 https://www.facebook.com/bosquerico/

【ネットワーキング】
イベント後半に行われたネットワーキングは、ゲストが「もっと語りたい」と感じたテーマをもとに進行。今回からは参加者全員がひとつのルームに集まるようになり、よりにぎやかにな雰囲気になりました。

ゲスト個人とより深くつながれるネットワーキングは、100人カイギの大きな醍醐味。次回以降もZoomで実施予定ですのでぜひご参加いただければと思います。

なお、次回のおかやま100人カイギ vol.13は、2月24日(水)に決定。ゲスト情報など詳しくはこのホームページやSNSでお知らせしますので、お楽しみに!

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