【ごあいさつ】
新年、明けましておめでとうございます。今年も、おかやま100人カイギをどうぞよろしくお願いします。
さて、昨年12月16日、おかやま100人カイギ vol.11が開催されました。バラエティ豊かなゲストが登壇してくださるこのイベントも、いよいよ後半戦に突入。オンライン形式でたくさんの方にご視聴いただきました。
イベントの後半、Zoomを使ったゲストと参加者の交流では、トーク本編では伝えきれなかった話題をさらに深掘りする形で、じっくり語らってもらいました。
それでは、5人のゲストによる“おもしろい”トークの中身を軸に、当日の熱気をレポートします。
【イベントレポート】
おかやま100人カイギの後半戦、その最初に壇上へと上がったのは梶岡 洋佑(かじおか ようすけ)さんです。いとこの影響を受け、高校時代から社長業にあこがれを感じていたという梶岡さん。地元の友人の多くが県外に出ていくなかで、地元を盛り上げるべく着目したのが農業という道でした。
中四国ではトップの農業生産額を誇る岡山県。「農業が元気になれば、岡山も元気になる」という思いから、岡山大学在学中の21歳のときに株式会社いぶきを起業しました。いまでは瀬戸内市内に3ヘクタールの農地を持ち、約50種類の野菜を生産。雇用創出という文脈からも、地域社会に貢献しています。
もうひとつ、梶岡さんが力を入れているのが、子どもたちを対象とした食育です。幼少期、どんな質問を投げかけても応じてくれた両親の存在から、教育を大切さを痛感。その思いをクラウドファンディングへと発展させ、来年4月から「『知りたい』を育てる農業体験」を開始する予定です。
また、作って売るだけではなく、農業の潜在的な価値を伝えるのが自らの仕事とも語る梶岡さん。誰もが持っている「知りたい」という欲求を“農”を通して満たすことこそが、ご自身のミッションなのでしょう。野菜のパウダーを使ったアレルギー対応のお菓子を製造・販売する裏側にも、その思いは確実に息づいているように感じられました。
■梶岡さんの会社はこちら
株式会社いぶき http://ibuki-yasai.com/
続いては、詩のソムリエ・渡邊 めぐみ(わたなべ めぐみ)さんが登場。耳慣れない肩書きを名乗るに至ったのは、言葉を大切にする神社の家系に生まれたこと、そして小学校入学時に手渡された詩集『ひばり』からの影響があったそうです。
東京大学の大学院では寺山修司をはじめとした戦後詩を学び、一時は研究者を目指していましたが、より社会の役に立つ仕事をと教育系の出版社に就職。これがきっかけで、岡山との縁が生まれました。詩のソムリエを始めたのは、転勤先の東京。詩の紹介やワークショップを通じて、言葉を味わうという営みのおもしろさを人々に伝えてきました。
その後、脱サラしフリーランスとして「ソムリエ」の活動を本格化させた渡邊さん。ではなぜ、詩の魅力を伝える活動を続けるのでしょうか。それは、詩は1人で書いたり、読んだりすむものというイメージを覆したいから。「みんなで詩を読むと、みんなで詩をつくるとメッチャおもしろい」というストレートな表現からは、ご自身の活動から得られる充足感がはっきりと伝わってきました。
実際、スタジオでは中村アナとオノマトペを使った言葉遊びも披露。同じ言葉であっても、人それぞれ受け止め方が異なることがよく分かりました。そんな取り組みを通じて、自分の感性にも、他人の感性にもうなずき合える社会をつくるのが、渡邊さんの目標。不寛容な社会のあり方を変えるのは、言葉の力なのかもしれません。
■渡邊さんの活動はこちら
詩を食べる ポエジオ食堂 https://note.com/poezio_shokudou
さて、3人目のゲストは、コミュニティマネージャーの渡邊 雅斗(わたなべ まさと)さんです。大学進学を機に移り住んだ岡山、そして地元の愛媛でそれぞれコミュニティスペースを運営しています。その活動の根幹をなすのは「心身ともに健康に」というご自身の生涯のテーマ。
中学3年生という多感な時期に、父の自死に直面するというつらい経験に導かれるかのように、心身の健康、そして人のつながりを意識するようになったそうです。大学在学中には就職活動も経験しましたが、最終的に新卒での就職はせず。岡山後楽園近くの空き家を改装し、備前焼などの物販に取り組みました。
しかし、家族や友人の支えがあったからこそ、ここまで来られたという思いを強くした結果、徐々にコミュニティスペースへとシフト。さまざまな人が集い、つながりを深める空間をマネジメントするようになりました。
誕生日会やカレー会、ネットラジオ、人生相談など、コミュニティマネージャーとしての仕事は多種多様。運営を続けるうちには、渡邊さんの活動をきっかけに結婚するカップルが現れるなど、うれしい出来事もありました。多様なつながりの形は、しっかりと実を結んでいるんですね。
渡邊さんの言葉のなかでも、特に印象的だったのが「人間関係は量より質」というひと言。そこからは、ほんの些細なコミュニケーションであっても、親しい他者とのつながりがあること自体が人生を豊かにする事実が、確かに読み取れました。
■渡邊さんのTwitterはこちら
https://twitter.com/masato19870410
2人の渡邊さんに続いて話を聞かせてくれたのは、藤井明子(ふじいあきこ)さん。岡山市役所に20年近く勤務し、今年3月に早期退職した藤井さん。現在はAki agriculture supportと行政書士事務所を立ち上げ、「おいしい」を未来につなげる活動に励んでいます。
市役所時代は会計課をはじめ、7つもの部門を経験。その最後にたどり着いたのが、農林水産課でした。米の転作、園芸作物、畜産・酪農など、さまざまな生産者のもとを訪ね歩いた藤井さん。5年間におよぶ在籍期間中は「農家との出会いがとても楽しかった」と、シンプルながら力強い言葉を聞かせてくれました。そんな思いがあったからこそ、早期退職という思い切った決断ができたのでしょうね。
農業の担い手不足が顕在化する昨今、藤井さんが問題意識を持っているのは、国や自治体の農業支援策がじゅうぶんに周知されていないこと。いくらすばらしい政策でも、利用しないことには意味がありません。そこで、藤井さんは農家のもとを頻繁に訪ねて、それぞれが抱える課題をヒアリング。減農薬、新品種の栽培など、それぞれの目的に応じたアドバイスを送っています。キーワードに掲げるのは「No talk, All action!」。積極的な行動が実る日は、そう遠くないはずです。冬至が目前ということで、農家さんが持ってきてくれたという朝採れの連島れんこんや南瓜など「ん」のつく野菜を持ち込み、その紹介も交えながら語る表情から、農家さんや野菜への愛があふれていました。
vol.11を締めくくってくれたのは、上高寛之(うえこうひろゆき)さん。本業のデザイン事業のかたわら、2018年に日本マルチコプター協会を設立し、ドローンの普及や教育活動に取り組んできました。設立からわずか2年、いまでは日本全国に20以上の拠点を構えるまでに至っています。
講習やライセンスの発行の一方では、エンターテインメント事業も展開。奉還町商店街を舞台に開かれた日本初のドローンレースは、YouTubeで1日35万回も再生されるなど話題を呼びました。
空撮、プログラミングなど、ドローンの持つ可能性は無限大。一時は自身がのめり込んでしまい、協会の活動が満足にできないこともあったといいますが、現在は教育・普及に全力を注ぐ上高さん。小学校で無料のドローン教室を開いたり、熊本県人吉市の豪雨災害を記録に残したりと、さまざまな方法で「いつか当たり前になること」を前に進めています。
トークの中盤では、ドローンの実演も披露。スタッフやゲスト、カメラの前をスムーズに飛行するドローンに、スタジオは興奮に包まれました。ひょうひょうとした口ぶりながら、一つひとつの言葉からは熱意が伝わってくる。そんな上高さんの話が終わり、イベントは後半へと突入しました。
■上高さんの活動はこちら
日本マルチコプター協会 https://www.jma.world/
【ネットワーキング】
イベント後半に行われたネットワーキングでは、ゲストが前半のトークでは話しきれなかったテーマを深堀。少人数ながら終始和やかな様子で盛り上がりました。
ゲスト個人とより深くつながれるネットワーキングは、100人カイギの大きな醍醐味。次回以降もZoomで実施予定ですのでぜひご参加いただければと思います。
なお、おかやま100人カイギ vol.12は、来年1月27日(水)に決定。ゲスト情報など詳しくはこのホームページやSNSでお知らせしますので、お楽しみに!