2021年12月15日、おかやま100人カイギが開催されました。KSB岡山本社内のスタジオで繰り広げられたトークは、YouTubeLiveで全国配信。多くの人々にご視聴いただきました。
テーマは「新しい発見がひとつでもあること」そして「私も何かやってみたいと思えること」。いま頑張っている人を応援したい、エリアを超えて人と人とがつながるきっかけを作っていきたいと2019年8月に始まった「おかやま100人カイギ」も今回で登壇者は90組となり、解散まで残すところあと2回となりました。
5人のゲストによる会議の内容をレポートします。
【保健学博士・ドイツ整形外科靴職人】中山 憲太郎さん
「世界中の人を足元から幸せにしていきたい」
靴のドクター・職人・オーナーという「3足のわらじ」を履きこなし、足で困っている人のために活躍している中山さん。
岡山県玉野市出身の中山さんが実家の靴店を継いだときに、足のトラブルの多い高齢者のお客様のためのオーダーメイド靴を作る機会が多くなり、これからの靴作りには高度な専門知識と技術が必要だと考えました。
実家の靴店を営みながら日本でドイツ人靴職人に5年間師事。2006年にドイツ国家資格ゲゼレ「整形外科靴職人」を取得。さらに日本人独特の足の問題を勉強するため、働きながら新潟にある医療大学に5年間通い、2017年には保健学博士号を取得しました。
今では中山靴店グループの代表をしており、足や靴で困っている方のための靴屋さん「中山靴店」でオリジナルシューズの製造販売、卸事業や、病院を訪問し、足で困っている患者さん向けの中敷きや靴を作っています。
足圧計測の実演を交えながら、実際にはどのようなことをしているかわかりやすく語ってくれた中山さん。
「人間の足は世界中、全員一緒。なので、私たちのしていることは世界中の方に貢献できるのではないか。人材の育成や、研究含めライフワークとして引き続きやり続けていきたい、仲間たちと一緒に働けたら幸せだ」と語りました。
中山靴店のサイトはこちら
https://www.lamanodekent.co.jp/
【ブレストミルク ジュエリー アーティスト】櫔原 悠希さん
「いつでもお母さんに寄り添い、支えとなる存在でありたい」
ジュエリーを制作するだけでなく、お母さん同士のつながりやジュエリーそのものを文化にしたいという櫔原(とちはら)さん。
大阪出身の櫔原さんは社会人経験を経て、留学先のオーストラリアで12年間生活をし、結婚、出産、子育てを経験。7年前に現地で文化として根付きつつあった母乳ジュエリーに出会いました。子供のための短期留学のつもりで帰国した吉備中央町の暮らしが気に入り、2020年4月よりオーストラリアから本格移住、現在はそこのアトリエで母乳ジュエリーを制作しています。
母乳ジュエリーは、「お母さんの無償の愛を形にした、お母さんの頑張りをたたえるジュエリー」という櫔原さん。たくさんのお母さんたちとジュエリーを通してやり取りする中で、櫔原さんがそのことを特に感じ、印象に残ったエピソードを話してくれました。
「産後うつで死を考えた日に届いたお客様からは、『母乳ジュエリーを見たら頑張ろうと思いなおしました』と、喜びのお電話をいただきました。そして、中にはお子様の命日に届いた方もいらっしゃいます。この方は13年間捨てられずに冷凍保存しておいた母乳で制作させていただきました。そのお客様からは『これでずっと一緒にいられる気がする』と喜びのお手紙をいただきました。私自身すごく不思議ですが、思いのこもった商品であるからこそ、このような現象が起こるのかなと思っております」
今後もたくさんのお母さんを幸せにするだけでなく、母乳ジュエリーを新たな文化として確立するために、現在はオンラインでのコミュニティーづくりを進め、お母さん参加型で、意見交換ができるインスタライブを月2回ほど開催しているそうです。
母乳で作るブレストミルクジュエリー Solid Love サイトはこちら
https://www.solidlove.shop/
【心に響く一枚を撮影するフォトグラファー】白井 崇裕さん
「100年先200年先の人たちのために、写真で表現する」
人のためにできることをこれからの未来に向けて、写真で表現する白井さん。
17歳の時に、鉄道写真を撮りに行った先で出会ったプロカメラマンの人に自分で撮った鉄道写真のアルバムを見せたところ、「君、これだけ撮れていたら食べていけるよ」と言われ、それから鉄道や新幹線を専門に雑誌などで写真の仕事をしてきました。
最近では、西日本豪雨の被災地で泥の片づけなどのボランティアをした時に撮った写真で展覧会を開き、1枚3.6メートルのサイズ、全部で64メートルの長さにわたる写真を展示しました。理由は、「被災というのは普段ある日常生活を失うということなので、写真でそれをどう伝えればよいかを考えて、写真を大きいサイズで展示すれば、見た人の心に響くはずだと思った」と語る白井さん。被災者の心に寄り添いたいという思いでこの活動をしました。
会場には、和装で参加された白井さん。「和服で出ると言ったら、『スーツで出なさいよ』と奥さんに怒られましたが、日本の心も忘れないようにしてほしいという意味で、今日は和服にしてみました」という白井さん。
「人との出会いがなければ、写真の道には進んでこられなかったと思います。写真を撮る以上に、人とのかかわり方、付き合い方が最も大事で、人の心を大切に、これからも写真を通して多くの人が喜んでもらえるようなことをしたい」と語りました。
白井 崇裕さんのHPはこちらから
https://takahiroshirai.com/
【日本語教師・やさしい日本語講師】中島 正恵さん
「日本人、1億2千万総『やさしい日本語』Speakerをめざして!!」
「日本語を学ぶ外国人と、日本にいる外国人と話す日本人のために、日本語を教えたい」という中島さん。
岡山県出身の中島さんは高校生の時、交換留学生から日本語について英語で質問をされましたが、日本人なのに日本語が分からない自分に衝撃を受けました。その時のことが忘れられず、一般の大学進学、企業に就職ののち、岡山外語学院で日本語教師になりました。
さらに最近では、多文化共生社会の共通言語である『やさしい日本語』の講師として、「『やさしい日本語』は相手への思いやり」という意識を広めるため、地域や外国人受け入れ企業等で講演を行っています。
「『日本人だから日本語を教えるのは簡単ですよね?』と言われることもありますが、答えは大きな「NO」です」という中島さん。会場では日本語を教えることの難しさをクイズ形式で出題。登壇者の方と、意外と日本語について知らないことを再確認する結果に。
「実は日本人が日本語を教えるのは、外国人が日本語を教えるのよりも難しいのではないか。そんな中、日本全体で年々、外国人が増え、隣近所に住んでいる方が日本人に限らない。その人たちとどうやってコミュニケーションをとるかというのが今後の日本人の課題だと思う」といいます。
そんな課題を解決するのが、『やさしい日本語』。「『やさしい日本語』は、阪神淡路大震災の時に始まりました。避難所で炊き出しなどをする際、外国人にも内容がわかりやすいように余計な漢字や謙譲語を除いた、シンプルな表記に変更したところ、たくさんの外国籍の方が避難所に訪れ、いろいろ物資を受け取ることができました」といいます。
今後の目標は「日本語教師として、外国人の方の日本語が上手になるように、それと共に、日本の方がやさしい日本語、簡単な日本語を話せるようになり、どこの方とでも交流できるようになるように、『やさしい日本語』をお伝えしていければ」と語りました。
岡山外語学院のHPはこちら
https://okg-jp.com/
【家業と起業とベンチャーキャピタル】藤田 圭一郎さん
「地方にいないのは起業家ではなく投資家」
「『地方だからあきらめる』というのをなくしたい」という藤田さん。
岡山で生まれ育ち、大学卒業後、ベンチャー勤務を経て2012年に岡山で家業の業務用酒販店を継ぎました。
その家業と並行して事業を起こした自身の経験から、「地域的な制約がある中で頑張る岡山の創業初期の起業家が、少しでも東京の起業家と同じ土俵で戦えるような環境を作りたい、もしくは地方でも成長力が高い学生が、働ける企業に入り実務経験を積めるような環境を作りたい、地方が足かせにならないような世界を作っていきたいと思った」という藤田さんは、5年ほど前から岡山の起業家を応援する取り組みを始め、現在は家業と起業と、起業家の応援という3つの軸で活動しています。
「応援したい起業家はスタートアップ企業と言われるような事業体の起業家で、普通の企業と違うところは、必ず新しいビジネスモデルをもとに急成長を前提としていること。このスタートアップ起業家が、東京に一極集中し、なかなか岡山や地方だと生まれない。理由はスタートアップ企業が最初に成長するときに必要な資金を提供してくれるところがあまりないこと」という藤田さん。
その課題を解決するべく、様々な志を持った起業家や投資家の集まるイベントなど開催し、定期的に事業発表の場を提供し続けています。
「10年後も起業家と一緒にうまい酒を飲みたいっていうのがありまして、自分の周りにスタートアップ起業家がいる状況を作りたい、そのためにできることをやっていきたい。私自身も志高い起業家と一緒に酒の席に呼んでもらえるように、自分自身も挑戦していきたいなと思っています」と語りました。
藤田 圭一郎さんのTwitterはこちら
https://twitter.com/keiichilo
様々な思いを持った面白い人が岡山にはたくさんいることに気が付いたという中山さん、今回の会議で岡山が非常に「アツい」場所であると思ったという櫔原さん、人との出会いは宝物だという白井さん、人との交流が発見につながり、次への原動力になるという中島さん、関わる人が頑張っていると自分も頑張る気持ちになれるという藤田さんなど、「つながる力」の大切さに改めて気が付いた意味のある会議となりました。
次回vol.19は、1月19日(水)。オンラインで配信予定です。
ゲストの詳細は、FacebookやTwitterでご案内するので、お楽しみに!