【ごあいさつ】
新型コロナウイルスの影響で、長らく実施を見合わせていた「おかやま100人カイギ」。約5ヶ月ぶりの再開となるVol.8を、7月15日(水)にオンライン形式で開催しました。
無観客での実施は、もちろん初の試み。配信環境の整備をはじめ、事務局ではさまざまな準備を重ねて当日を迎えました。YouTubeでの配信は、当日700名以上の方にご覧いただきました。視聴してくださった皆様、ありがとうございました!
【イベントレポート】
司会の中村アナウンサーからのゲスト紹介に続いて壇上に立ったのは、川崎医療福祉大学の教授で作業療法士の田中順子(たなか じゅんこ)さんです。月に一度、倉敷市内にある教会の一室で、即興音楽による歌づくりカフェ・イムズミュージックを開催されています。
「歌づくり」とあるように、毎回その場で新しい歌をつくるこのイベント。音楽経験にかかわらず、誰でも参加できる懐の深さが特徴です。楽譜いらずの即興音楽に軸足を置くのも、そんな理由から。演奏面はプロのミュージシャンがサポートします。
参加者のなかには、心に障がいを抱える人も少なくないとのこと。自作の詩をみんなで歌ったことで引っ込み思案が和らいだり、主役になれる場を得たことを機に人とのコミュニケーションが円滑になったりと、参加者が大きく変わるきっかけが生まれたといいます。
田中さんがこの活動を通じてめざすのは、障がいのあるなしによる壁を取っ払い、誰もが認め合える場をつくること。お話を聞くにつけ、イムズミュージックの今後が楽しみになってきました。
■田中さんの活動はこちら
イムズミュージック https://imusmusic.hatenablog.com/
2番手は、歴史的な視点から岡山の魅力を再発見する街歩きナビゲーター・福田忍(ふくだ しのぶ)さんです。
結婚に伴い移住してきた岡山を知ろうと、県内の史跡めぐりを始めた福田さん。当初は有名スポットを中心に訪ねていたといいますが、次第に知る人ぞ知るおもしろいスポットに惹かれるようになり、ついにはリトルプレス『おかやま街歩きノオト』を発行するに至りました。
街歩きスポットの実例に挙がったのが、岡山市北区にかかる栄橋。石造りの堂々たる橋ではあるものの、街外れという立地を考えると少々立派すぎるのではという疑問がわく物件です。それもそのはず、栄橋があるのは戦前の都市計画では幹線道路が通るはずの場所だったから。地元の人から聞いたエピソードだそうですが、こういった話を仕入れられるのも、自らの足で街を深掘りする福田さんならではのことでしょうね。
実際に街を歩き、土地の人とふれあう。車のハンドルを握っていては見落としてしまうような一期一会が、岡山の街の至るところに散りばめられていることがわかりました。
■福田さんの活動はこちら
おかやま街歩きノオト https://machinooto.exblog.jp/
続いて話を聞かせてくれたのは、備前焼作家の赤井夕希子(あかい ゆきこ)さん。師匠の平川忠さんとのタッグで、日本遺産にも指定されている備前焼の伝統継承に取り組まれています。「人前で話すのが苦手なので、土と向き合う仕事をしている」という前置きの後、一つひとつ言葉を紡ぐように語られました。
赤井さんが陶芸の道に進むきっかけを与えてくれたのは、上水道も整備されていない山村集落で過ごした幼少期の体験。自然豊かな里山を駆けまわって育った自らのルーツに、釉薬など人工のものを使わず、土そのものの特色を生かしてつくる備前焼のイメージが重なったそうです。
現在、赤井さんが取り組まれている土窯は、備前で中世に築かれた土窯を復元したもの。電気窯などとは異なり内部で火が円を描くため、熱効率がとてもよいとのことです。1000℃以上の高温で焼き締められた作品には、土本来が持っている個性が表れます。
9年間の修業期間を経てひとり立ちした赤井さんは現在、平川さんと共に「土窯 Project」と銘打って中世の窯跡の発掘調査に携わったり、土窯づくりの依頼を受けてアメリカに渡ったり。ただ技術を磨くだけでなく、備前焼という文化そのものを広く伝えたい、陶芸を通して岡山の自然の豊かさを知ってほしいという、温故知新の想いが熱く伝わりました。
■赤井さんの活動はこちら
土窯 Project https://www.tsuchigama.com/
4人目は“コトをつくるバーテンダー”・園田浩也(そのだ ひろや)さんです。
15歳のときに始めた居酒屋のアルバイトで人と話すことの楽しさに目覚め、バーテンダーという職業を選んで20年以上。30代を目前にして自身の店・バーコントワールを開いてからは「自分の商売だけでいいのか?」という問いを日に日に深めていったそうです。
そこで、ふと思い立ったのが地域のイベントへの参加だったとか(ご本人いわく「感じで」とのこと)。西川緑道公園の満月BAR、ハレノミーノくらしきをはじめ、県内外を問わず数々のイベントに出店しては、バーカウンターを舞台に培ったホスピタリティを地域社会に還元してきました。
縁が縁を呼び、国立ハンセン病療養所・長島愛生園の学芸員と話すイベントを催したり、職業体験を目的に児童養護施設で出張バーを開いたりと、ここ最近はさらに活動の場を広げている園田さん。バーテンダーとして社会にできることを常に模索するその人柄が、とても素敵に感じられました。
■園田さんのお店はこちら
バーコントワール https://bar-comptoir2006.com/
大トリを飾ってくれたのは、黒住 宗芳(くろずみ むねよし)さん。幕末から続く黒住教の8代目で、なおかつ一人っ子という事情から「逃げ道がなかった」との前置きもそこそこに、ご自身の社会貢献活動について熱のこもった話を聞かせてくれました。
一市民として地元を元気づけたい、困っている誰かを助けたいというのが黒住さんのスタンス。大学から社会人にかけて暮らした東京から帰郷すると、瀬戸内国際芸術祭や車いす利用者のサポート運動・HELPUSHへの支援など、神職と並行して積極的に地域に顔を出してきました。
そんな活動が軌道に乗り始めた2018年、岡山を襲ったのが西日本豪雨です。週2回の現地支援に加え、被災地にぞうきんなどを送る「ぞうきんプロジェクト」への参加など、発災直後から行動を開始した黒住さん。その後は岡山を勇気づけようと動画制作プロジェクト「カモンベイビー オカヤマ!!」を立ち上げ、より前向きに苦難を乗り越えようと働きかけました。
今回のコロナ禍に際しても「ワクワクできることで乗り越えたい」と、「祈砲花火」と題したサプライズ花火を企画した一方、文化・芸術分野の支援プロジェクト「Beyond 18(イチハチ)」を開始。宗教の枠にとらわれず、多くの人がつながり、支え合う社会の実現に向けた黒住さんの歩みは、今後も留まることがなさそうです。
■黒住さんの活動はこちら
Beyond 18 https://beyond18.stores.jp/
【Q&Aタイム】
それぞれに聞きどころのあるトークが終わり、ブレイクを挟んでQ&Aタイムに突入。ここからは感染症対策のため、全員がマスク着用で進行しました。
参加予約の時点でお寄せいただいた質問だけでなく、実際のトークを受けてリアルタイムに質問ができるのは、オンライン開催ならでは。「日頃の息抜きは?」との質問に、田中さんによる笑いヨガの実演が飛び出すなど、お互いの姿は見えなくても大いに盛り上がりました。
なお今回のおかやま100人カイギの模様は、8月19日(水)26時からKSB瀬戸内海放送でお届けします。Vol.9の開催については日程が決定次第、ホームページやSNSでお知らせします。それでは、次回をどうぞお楽しみに!