【レポート】6月23日開催 おかやま100人カイギvol.15

2021年6月23日、おかやま100人カイギ vol.15が開催されました。前回に引き続きオンライン形式。多くのみなさんにご視聴いただきました。


YouTube配信でのトーク本編に加え、チャット欄での質問を交えながら、盛り上がりを見せた今回の配信。5人のゲストによるトーク内容を中心に、当日の模様をレポートします。


【イベントレポート】

今回最初の登壇者は、山上正道さんです。山上さんが勤務する国際NGO アムダ社会開発機構(アムダマインズ)とは、開発途上国ならではの課題、健康の向上・貧困に取り組む団体です。現在、アジア・アフリカ・中南米の8か国で活動しています。開発途上国では医療従事者が少なく、山上さんを始めとするアムダマインズは、健康状態がすぐれない人々のために、中長期間で展開すべき課題に取り組んでいます。

山上さんは民間企業勤務後、青年海外協力隊としてザンビア共和国に派遣されました。青年海外協力隊の取り組みも開発途上国のことも知らず飛び込んだのですが、自分の持つ自動車の技術が人の役に立つと分かり、帰国後も「また海外に出たい」「職業にしたい」と思うようになり、2002年にはアムダ海外事業本部に入職。パキスタンにて難民支援事業、ミャンマーにて母子保健や農村開発事業に従事。中越沖地震、東日本対震災の緊急救援も行いました。
アムダマインズの主な活動は、発展途上国で「病気にならないためにはどうするか?」の視点からの指導です。マラリアなどの感染症対策や生活習慣病の予防対策、徹底した手洗い指導による病気の予防、病気の早期発見・早期治療のための検診など、コロナ禍でも「少しでも健康に過ごせるように」と日々活動しています。
若者向けに広報用アニメ『愛ラブマインズ』『すすめ!!マインズジャー』も制作。多くの人たちにアムダマインズの活動を知ってもらいたいと、山上さんは語ります。

■山上さんの勤めるアムダ社会開発機構(アムダマインズ)はこちら
https://www.amda-minds.org/


2人目はフィットネスジム「Fit Body Design」オーナーかつパーソナルトレーナーの岩本将弘さんです。学校卒業後、東京消防庁、真庭市地域おこし協力隊、オーストラリアでのワーキングホリデーを経て、今のフィットネスジムを運営しています。
岩本さんはかつて、急性腎不全を発症。「もうスポーツができないかもしれない」と悩んだ経験から「健康が一番」という考えに至ります。岩本さんは「健康」という土台の上に信頼やお金、理想の自分がいるのだと考え、健康に携わる仕事につきたいと思うようになりました。
Fit Body Designは、重りを上げるようなジムではなく、全身運動で身体能力を高めるジム。コンセプト「1人1人に合った身体・心づくり」を元に、個別指導をメインにしたボディトレーニングを行っています。岩本さんは「未来のフィットネス」と称し、普段の生活における体の悩みを解決しようとしています。それには短期間のトレーニングではなく、最低でも1年ほどかけて体と習慣を作る必要があると語り、「一生その体でいられるから」とアドバイスしながら活動しています。

さて、真庭市は岡山県の北に位置する山深い場所。なぜここでフィットネスジムを開設するのか?としばしば聞かれるようですが、岩本さんは「田舎こそフィットネスジムが必要な生活環境だ」と強く語ります。車社会の生活スタイル、年齢層が高く動く必要性のある人々が多いことがあげられます。また近所や職場以外の関係性が持ちにくいことから、ジムが新しいコミュニティの場へ変貌し、若者が集まる場所になればと考えています。
現在は訪問依頼が増えており、今後は県北・県南を結ぶような存在になれるような展開をしたいと考えています。

■岩本さんが経営するフィットネスジム FIT BODY DESIGNはこちら
https://www.fitbody-d.com/


3人目は田計(でんけい)珠実さん。美術作家として扱うのは「どろ」です。「どろ」をキーワードにワークショップを行い、作品を販売しています。また「どろコレクター」としても活動しています。
田計さんは学生時代にどろと出会い、3トンのどろとたわむれる映像作品『どろと私』を制作。卒業後は大阪で劇団スタッフを経験し、その後備前焼窯元で5年半修行します。その窯元で「どろを焼いたら、人に渡して買ってもらえる」と気づいたことが、自分の中で大きな発見となりました。
しかしそれにとどまらず「私の思う“どろ”と少し違う」「私の思うどろを追及しよう」と思うように。その後2019年に「どろあそび実験中」と称した美術活動を開始しました。

どろあそびで生まれた、意図していない形のどろを焼くことで生まれた作品は「自分の考えの外にあるもの」。その面白さに田計さんは、活動の幅を広げます。どろを焼いて土器を作ったり、童心に帰るような、どろを投げ合うワークショップを展開。子どもや大人とどろあそびを繰り広げながら、自身の作品作りのヒントを探しています。
「どろが好き」という田計さん。田計さんの考えるどろが全て詰まっている『どろの本』も制作しています。
海外にも行ってみたいと目を輝かせる田計さんの夢は、ずばり「どろで世界征服」。どろは世界共通のコンテンツ。どろの魅力を伝えるために、田計さんはますますどろを追及します。

■田計さんの「どろあそび実験中」はこちら
https://www.dorodorotamami.com/


4人目は姫井明さん。繊維製品の染色加工を専門とするセイショク株式会社の取締役社長です。1880年、倉敷市で糸を生地にする織布事業で創業。その後、紡績から染色まで事業領域を広げ、繊維の一貫体制を構築した140年以上の歴史ある会社です。
姫井さんが今回紹介するのは、新素材「ニューノス」。廃棄予定の規格外品「ロス・ファブリック」を、分別不要のアップサイクル技術を利用して生まれたのがニューノスです。
製造は、廃棄される予定の布を500枚から600枚重ねたミルフィーユ状態のものに、特殊な樹脂を混ぜることから始まります。特殊な技術で生まれた微妙なたるみやゆがみを生かした布は、水平方向に切ると抽象画や大理石のような模様が生まれ、垂直に切ると地層のような表情になりました。ニューノスはホテルの内装やアートワーク、店舗ディスプレイなどで利用され、注目されています。

この新素材が誕生するまで、9年の歳月を必要とした姫井さん。その原動力は廃棄される布を「もったいない」と感じたこと。そして染色事業を残したいという思いからでした。姫井さんが2011年に入社した当時のセイショクは、染色事業の売上額は大きいものの、毎期損失を計上するような状況。さらに取引先の海外シフトも重なり、事業縮小・転換を考えざるを得なかったと言います。しかし、姫井さんは真面目な社員のため、140年以上続いた染色技術を継承するため「何とか本業の染色事業を残したい」と思うようになり、2012年に新規事業開発課を立ち上げたのです。
本来捨てられるはずだった廃棄物に、新たな付加価値を持たせ、別の新しい製品に生まれ変わらせるのが「アップサイクル」。リサイクルとは違うこの技術は、SDGsにも貢献。「社会貢献を行っている会社で染めたい」と申し出てくれる人もいるそうで、本業にも相乗効果をもたらしています。また他社でも生地を廃棄したくないと思っている企業もいると考え、社会課題の解決にはるのでは、と思ったそうです。
「ニューノスを世界に誇れるジャパンブランドにしたい」と熱く語る姫井さん。今はまだ始まったばかりです、と言いながらも視線の先は、これから10年先の世界に向けられています。

■姫井さんが経営するセイショク株式会社はこちら
http://seishoku.co.jp/


5人目は、真庭市消防本部・総務課で勤務している黒田茂樹さん。調理・接客・お勘定まで全て消防士が行う食のイベント『消防士の台所in真庭』をプロデュースしました。
山間部にある真庭市には出前を頼める店も少なく、今も消防士自らまかない飯を作っています。黒田さんは「早い・うまい・安い・温め直すことができる」条件がそろったまかない飯を「消防めし」と呼んでおり、この消防めしで「地域の方とつながることはできないだろうか」と考えました。
取り組みのきっかけは、毎年全国で災害が発生しているにもかかわらず、防災に関心のない人がいること。2018年に発生した西日本豪雨災害では、真庭市でも初めて避難指示が出され、避難の在り方や防災の観点を話し合う中「安心安全なまちづくりのためには、一方的な啓発活動でなく、日頃から市民との交流が不可欠」「身近な“食”をテーマにすれば、誰もが来やすい場が提供できるのでは」と思いついたと言います。

イベント実現に向けて、若者からは「面白い」と声が上がる中、責任ある立場の幹部からは、前例のない取り組みに対して苦情を心配したり「これが仕事なのか?」と厳しい声も上がったとか。しかし周囲を巻き込みながら綿密に準備を重ね、全員が食品衛生責任者講習を受講するなど、全力で取り組みました。
消防めしの提供から防災ブース設営、消防車綱引き大会など、身近なところで防災に触れられたこのイベントは、2019年2月と11月に2回開催。来場者からは「おいしかった」「避難体験ができた」「ハードルが低く、大切なことが学べました」など好意的な声をもらえたそう。また市民参加型スタイルが注目を集め、全国広報コンクールでも入賞。通常業務でも若手からのアイデアだしが増え、風通しの良い職場環境になったのではと、黒田さんは感じています。
現在、真庭市YouTube公式チャンネル「消防士の台所」を配信するなど、普段から見てもらえる環境づくりに取り組んでいます。安心安全の証拠となるよう、多くの人が笑顔になる取り組みを続けたいと考えています。

■「消防士の台所in真庭」のFacebookはこちら
https://www.facebook.com/cooking119/

【クロストーク】
後半に行われたクロストーク。生まれた繋がりを活かそうとしたり、直接アドバイスを受けたりと、様々な感想が登壇者から上がりました。5人それぞれが10年後の未来を語り合う姿からは、自身の好奇心を刺激された方もいるのではないでしょうか。


7月の開催はお休みです。
次回vol.16は、8月25日(水)オンラインで配信します!
ゲストの詳細は、決まりましたらFacebook、Twitterでご案内しますので、しばらくお待ちくださいませ。

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