【ごあいさつ】
11月25日、おかやま100人カイギ vo.10が開催されました。2019年8月に始まった催しも、ようやく折り返し地点。長引くコロナ禍の影響を受け、今回もオンライン開催となりましたが、たくさんの方にご視聴いただくことができました。
イベントの後半、Zoomを使ったゲストと参加者の交流では、前半のトークで話しきれなかった話題をさらに掘り下げ、じっくり語ってもらいました。
それでは、5組のゲストによる興味深いトークの中身を中心に、当日の模様をお伝えします。
【イベントレポート】
vol.10のトップバッターを務めてくれたのは、おかやま100人カイギでは初めてご夫婦での登壇となった、シャビン&ともみさんです。KSB岡山本社のすぐ近くで南インド料理店・パイシーパイスを営むおふたりは、国際結婚を果たして10年近く。2017年に開店した店は、ミシュランガイドにも掲載されるほどの人気を博しています。
お話はオーストラリアでの出会いから結婚、ともみさんの地元・岡山に戻って以降の苦労の日々、そして地場食材をふんだんに使って地元を盛り上げたいという思いに満ちた、将来の展望にまでおよびました。なかでも聞く人の心を打ったのが、開店前に訪れたインドでシャビンさんが倒れ、生死の境をさまよったときのエピソード。「僕はもういくよ」というシャビンさんに、ともみさんは「まだまだこれからでしょ」と声をかけたのです。
それ以降、ふたりには「夢を先延ばしにしない」という人生の指針ができました。パイシーパイスの名物・ミールスは、カレーをはじめさまざまなおかずを混ぜ合わせて完成する料理。南インド・ケララ州と岡山、それぞれに異なるバックグラウンドが融合した名店の今後がますます楽しみです。
■シャビン&ともみさんのお店はこちら
パイシーパイス http://h-anei.com/
2番目にマイクの前に立ったのは、津山市を拠点にローカルの可能性を追い求める春名久美子(はるな くみこ)さん。長らく東京で編集者として活躍していましたが、縁あって「帰ってこまい」と考えていた岡山に帰り、現在はアグリツーリズムや食育活動など、食から地域を見つめ直す活動に励んでいます。
ご自身のことを「生産者でも消費者でもない、中間の存在」と表現する通り、専門知識がないからこそ生産の現場を知ってもらいたいというのが、春名さんのねらい。中高生と地元食材を使った商品開発を行ったり、セミナーを開いたりといった形で、両者の境目を埋めています。大切にしているのは、誰のために、どんなふうに、誰が喜ぶかといった視点。それを常に意識するのが、春名流の仕事術といえるでしょう。
ここ数年は、食以外の分野にも活動の範囲を拡大。たとえば、津山市にオープンさせた「Ziba Platform」は、年齢や属性に関係なく共通の好奇心に基づいた話ができる、共創スペースです。その運営を通して得られたのは、人と人の間にこそ仕事が生まれるという実感だったそう。「好きなこと、やりたいことに境などない」という力強い言葉には、あらゆる「境」を取り払って新しいことを生み出す、越境プロデューサーとしての自覚が見て取れました。
■春名さんの活動はこちら
マルイ・エンゲージメントキャピタル http://npomec.or.jp/
続いては、「ジャンボ亭小なん」の高座名で噺家としても活躍する倉敷市職員・牧野浩樹(まきの こうじ)さんが壇上へ。初の著書『コミュ障だった僕を激変させた 公務員の「伝え方」の技術』のタイトルからも分かるように、学生時代は友達ゼロ、2度の留年も経験し、就職活動時も約30社に不合格になるなど、これまでには数々の苦しみを味わってきました。
新卒で就職した会社を辞め、倉敷市に再就職を決めてからも「税金Gメン」でありながら、住民からのクレーム対応に窮する日々。人生そのものをつらく感じたこともあったそうですが、「しあわせはいつも自分の心が決める」という言葉に出会ってからというもの、考えが変わったそうです。「友達ゼロは自分を持っているということ」「クレーム対応はむしろ住民を喜ばせるチャンス」というように発想を転換できたからこそ、よりよい住民対応につながる「伝え方」を磨くゆとりができてきたのでしょうね。
牧野さんの言葉のなかで、特に印象的だったのが「『大変』は『大きく変わるチャンス』」というもの。新型コロナウイルスという未曽有の状況も、考え方ひとつで大きなチャンスに変えられるかもしれません。「大きく変わった」ご自身を体現する落語調の軽妙な語りに、そんなことを感じました。
■牧野さんの著書はこちら
学陽書房 http://www.gakuyo.co.jp/book/b524596.html
4番目のゲストは今回最年少、岡山理科大学付属高校3年生の桑木志帆(くわき しほ)さんです。4歳のときに父の影響でゴルフを始めた桑木さんは、当初からプロ志望。小学校1年生のときに出場した大会ではスコア117で最下位に沈むも、強い意志を持って練習に取り組み続けた結果、中3、高1と中国女子アマチュアゴルフ選手権を連覇。プロも視界に入る活躍を見せるようになりました。
そんな桑木さんを襲ったのが、突然のスランプ。ゴルフをやっていたからこそできた仲間の期待、「成績を残さないと」というプレッシャーが焦りにつながり、連覇の記録も途絶えてしまいました。このピンチを切り抜けるきっかけになったのが、新型コロナウイルスによる休校。たっぷりとできた時間を活用して自分自身を見つめ直し、苦手としていたパターの猛特訓、体幹強化など足りない部分を徹底的に補う練習を取り入れました。
地道な努力が実を結び、今年開かれた石川遼選手主催の大会では初の全国優勝。牧野さんの言葉を借りれば、まさに「大変」をチャンスに変えたというわけです。当日はスタジオでパターを披露。「すごく緊張しました~」と笑顔を絶やさない桑木さんからは、地元の先輩・渋野日向子選手に迫る可能性を感じずにいられませんでした。
さて、最後のゲストとなったのは、音楽家、遊鼓奏者、NPO法人理事長をはじめとした多彩な肩書きを持つハブ ヒロシさんです。さまざまな小道具を手に壇上に上がったハブさんの人生のテーマは、ずばり「遊び」。20代のころにはアフリカ、インド、インドネシアなどで音楽修行に明け暮れる一方で、著名なアーティストのレコーディングにも参加しました。
これまでとは違う土地でチャレンジがしたいと思いつき、地域おこし協力隊への参加を決めたのは31歳のとき。自作の太鼓「遊鼓」を叩きながら770キロの道のりを行脚し、高梁市有漢町に居を移しました。豊富な海外経験がありながら、新天地を「外国より外国」と感じたというハブさん。荒廃しきった小屋を小水力発電設備に変えるなど、有漢町を舞台にユニークな取り組みを展開しました。
そのうちのひとつが、伝承者を失った「長蔵音頭」の復活。郷土史をひも解いたり、地元の長老に話を聞いたりと地道な調査活動の末に、見事自らの思いを成し遂げたのです。西日本豪雨という大災害に見舞われはしましたが、翌年には地元の人とともにCD音源をリリース。トークの終わりにはゲストやスタッフを巻き込んで「長蔵音頭」を実演、有漢町での盛り上がりがスタジオにも確かに再現されたようでした。
■ハブさんの活動はこちら
金ノプロペラ舎 https://kinpro.amebaownd.com/
【ネットワーキング】
「長蔵音頭」の熱気冷めやらぬなか、今度はZoomを使ったネットワーキングがスタート。冒頭にお伝えした通り、「伝え方の公式20」「気持ちが下がったときにやっていること」など、前半のトークでは話しきれなかったテーマで参加者と盛り上がっていました。
ゲスト個人とより深くつながれるネットワーキングは、100人カイギの大きな醍醐味。次回以降もZoomで実施予定ですのでぜひご参加いただければと思います。
なお次回のおかやま100人カイギは、12月16日(水)に決定。ゲスト情報など詳しくはこのホームページやSNSでお知らせしますので、お楽しみに!